単位のはなし (1)

坪と平方メートル

不動産の世界では、現在も面積を「坪」で考えることが多いのはご存じのとおり。世の中がどれほどメートル法になろうとも、土地の面積や単価は「坪」の方がイメージしやすい方が多いのではないでしょうか?

もちろん、昭和41年から不動産登記簿は平方メートルに書き換えられており、証明等においては必ずメートル法を使用することとなっています。また、不動産の広告においては、不動産の表示に関する公正競争規約によりメートル法での表示が義務付けられています。

したがって、不動産業界では坪でイメージして平方メートルで記載する状態が継続しており、頭の中で常に行き来が必要です。

それでは、どのように換算するのが最も合理的なのでしょうか?私自身がこの業界に入ったときは、坪と平方メートルの換算は、1坪=3.3×平方メートルとして計算しておりましたが、当時の上司に0.3025で割り戻すように指示されました。今回は、あらためてその謎に迫ってみたいと思います。

 

0.3025はどこから来たか?

1尺とは10/33m

日本が近代国家へと歩み始めた明治初期に定められた、度量衡取締条例(明治8年)では、江戸時代に日本で初めて国土を測量した伊能忠敬が考案した折衷尺(1尺=約30.304cm)を参考として1尺を定義し、これに基づき原器を製作したとされています。

時代が進み、この考え方を引き継いだ度量衡法(明治24年3月24日法律第3号)においてはメートル原器を基準として、1尺=10/33mと定義されました。また、1間=6尺、1坪=6尺平方と定義されました。(度量衡法第2条・第3条)

1尺が6つ集まると1間となり、畳の縁の長い方と同じ長さとなります。畳の短い方の縁は3尺なので、畳2枚が1坪ということになります。

これを図にしてみると次のようになります。

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1尺=10/33mの定義に基づき換算すると1坪は、400/121平方メートルとなります。

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したがって、1坪 = 400÷121 = 3.30578512396694平方メートルとなります。

逆数にしてみると…

しかし、これでは小数点以下第14位まであり、実務的には使い物になりません。そこで、もうひと知恵出す必要があります。

1坪=400/121㎡ということは、1平方メートルは121/400坪ということになります。
したがって、1平方メートル=0.3025坪となり、数字5桁で同じ計算結果を導き出すことができます。

坪 = ㎡ × 0.3025
㎡ = 坪 ÷ 0.3025

したがって、この二つの式が坪と平方メートルのもっとも正確で簡便な換算式となります。現在も多くの登記簿に尺貫法による表示からメートル法への書き換えを行った経緯を持つものが多数あります。不動産調査をしていると、まれに尺貫法からメートル法への書き換え時のミスを見つけることがあります。

なお、昭和41年3月1日民事甲第279号民事局長通達では、1万坪未満は1坪を3.30578512㎡とした換算表をもとに書き換えることとなっておりましたが、㎡×0.3025で計算しても換算表と概ね一致した数量をえることができます。

 

坪と歩(ぶ)

坪と全く同じ数量を示す単位に歩(ぶ)があります。登記簿においては、宅地と鉱泉地の面積は坪で表記し、それ以外の地目については歩で表記されていました。これらの単位については、現在の登記簿においても必要に応じて記載されています。

ここで注意しなければならないことが一点あります。30歩の土地は1畝(せ)となり、10畝の土地は1反(たん)となります。さらに10反の土地は1町(ちょう)となります。

一方、坪で表記する宅地は、面積が大きくなってもずっと坪のままとなります。具体的に表現すると「1000坪のお屋敷」とは言いますが、「3000歩の田んぼ」とは言いません。「1町の田んぼ」となります。

これに、メートル法の面積を加えて表にすると次の通りとなります。

×30 ×300 ×3000
1坪 30坪 300坪 3000坪
1歩 1畝 1反 1町
≒3.30㎡ ≒99.17㎡ ≒991.73㎡ ≒9917.35㎡

したがって、30坪(1畝)は約100㎡、300坪(1反)は約1000㎡、3000坪(1町)は約10000㎡となります。

 

最初にメートル法ありき

1反が約1000㎡、1町が約1ヘクタールとなり、スムーズに換算できるのは単なる偶然なのでしょうか?

私たちが日常的に使っている「坪」は、江戸時代からのものではありません。明治時代にメートル法を基準として、旧来からの尺貫法との整合性を最大限に保ちつつ、メートル法へ移行するときには混乱が生じぬよう、慎重に練りこんで導き出した整数比が10/33なのです。