砂防法

砂防法とは

砂防法(明治30年法律第29号)は、重要事項説明で必須とされている法律のなかでは、民法に次いて古い法律であり、しかも明治欽定憲法下において定められたまま最小限の改正にとどめられています。

重要事項説明書において必ず説明が必要とされる土砂災害に関する法律は、ご存じのとおり「砂防法」、「地すべり等防止法」、「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」、「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」があります。

国土交通省の説明資料などを見ると砂防法・地すべり等防止法・急傾斜地法が土砂災害のハード対策として、土砂災害防止法がソフト対策として掲げられており、それぞれの法律の位置付けとして解説されていますが、その法律の棲み分けには何か釈然としないものがあります。

一般に砂防法は土石流対策のためといった説明がなされますが、この説明では比較的平坦な土地に砂防指定地がある根拠が見出せません。また砂防法自体に「土石流」といった記述はなく、砂防指定地の指定や砂防設備は「治水上砂防ノ為」とされています。

そもそも、砂防法は、明治前期の山林荒廃と水害激化を受けて、旧河川法(明治29年)と旧森林法(明治30年)と同時期に施行されました。荒廃した山は土砂を絶えず送り出し、河川下流域の川床を上昇させ水害の原因となります。そこで、水源地については森林法の保安林制度で、河川改修については河川法で、そしてその間にある渓流については砂防法でその土砂の流出を抑制したというのが歴史的な評価です。

つまり、現在砂防三法とされている砂防法は、もともと水害対策のために制定された法律であり、砂防指定地についても渓流沿いに位置しています。

 

「治水上砂防のため」

砂防設備や砂防指定地での制限は「治水上砂防ノ為」とされており、非常に抽象的です。また法律の制定時期が古く、当時の立法者が具体的に何を意図していたかは不明ですが、現在は以下の通りに解釈されています。

土砂の生産は、山地の斜面が降雨等による表面侵食等によって削り取られ、また、渓床や渓岸が流水により縦横侵食を起こすことによって絶えず行われており、これにより生産された土砂も不断に下流の河川へと流送され、あるいは台風や梅雨等による異常降雨時には土石流等となって莫大な量の土砂を流出させる。
これら土砂の生産及び流出は、河状を常に変化させ、また、河床上昇等の現象を生じさせ、水害の主要な原因を形成するとともに、土石流等による生命、身体、財産等への被害を引き起こす土砂災害を生ぜしめる。このような土砂の生産を抑制し、流送土砂を扞止することによって災害を防止することが「治水上砂防」とされている。

したがって、土石流対策としての砂防法は「治水上砂防ノ為」の解釈の範囲に由来しているものと考えられます。

砂防指定地

砂防法2条に基づき、治水上砂防のための砂防設備を要する土地または一定の行為を禁止し若しくは制限すべき土地として、国土交通大臣が指定した一定の土地の区域は、一般に砂防指定地と呼ばれています。

重説記載事項

砂防指定地内における制限は、各都道府県の条例により定められています。したがって、対象地が砂防指定地に該当している場合、条例による制限の確認が必要です。

一般的には下記の制限が多くみられます。
(1) 建築物その他の工作物の新築、改築、増築、移転又は除却
(2) 土地の掘削、盛土、切土その他土地の形状の変更
(3) の採取、鉱物の掘採又はこれらの集積若しくは投棄
(4) 竹木の伐採又は樹根の採取
(5) 土石又は竹木の滑下又は地引による搬出
(6) 家畜の放牧又はけい留

砂防指定地の確認方法

砂防指定地については、砂防指定地台帳の調製が都道府県に義務付けられており、砂防指定地が明確に地図等に落とし込まれている場合は、土木事務所でそれらの図面を確認することにより把握が可能です。

しかし、明治・大正・昭和の初期に指定されたものは、指定自体が大字単位や地番単位で指定がなされたものと思われ、複数回に渡る行政区画の変更、土地の分合筆、大規模開発等により、砂防指定地の範囲の特定に混乱を来している状況があります。

したがって、明確な地図等が整備されていない場合は、その指定の有無の把握に当たって閉鎖登記簿等の取得が必要となる場合があります。