造成宅地防災区域
概要
建物の耐震性能についての意識は私たちの社会に深く浸透しています。建築基準法のいわゆる「新耐震基準」が導入されたのは、いまから30年以上も前のことです。しかし、宅地そのものの耐震という観点については、長く意識されることはありませんでした。
宅地造成に伴うがけ崩れや土砂の流出による災害を防止するため昭和37年に宅地造成等規制法が施行されましたが、これらは大雨を契機とする災害について想定されているものであり、地震を前提とした規定は長い間存在しませんでした。
しかし、阪神・淡路大震災や新潟県中越地震等の際に、大規模に谷を埋めた盛土造成地の崩落等が多発したことを受け、平成18年に宅地造成等規制法が大幅に改正され、造成宅地防災区域制度が導入されました。
(宅地造成等規制法等の一部を改正する法律 平成18年法律第30号 平成18年9月30日施行)
造成宅地防災区域の指定
造成宅地防災区域は、宅地造成工事規制区域外で盛土をした土地の面積が3,000㎡以上などの条件を満たす場合に指定することができます。
なお、造成宅地防災区域内の造成宅地の所有者等には、災害の防止のため擁壁等の設置等の措置を講ずる責務や、都道府県知事等が、災害の防止のため造成宅地の所有者等に勧告や改善命令を行うことがあります。
重説記載事項
・取引する宅地建物が造成宅地防災区域にあるときには、その旨を説明しなければならない。
宅建業法施行規則16条の4の3によると、造成宅地防災区域に該当するか否かのみ記載することとなっており、所有者等による災害の防止のための措置(第21条)、知事の改善命令(第22条 )については、重説の記載事項となっていません。地震により地盤が滑動した3000㎡以上の造成地のうち、200㎡程度の個々の土地の所有者に何らかの対策を求めることが事実上無理だとは考えられますが…
指定状況等
造成宅地防災区域の指定要件は、宅造区域外で3000㎡以上の盛土等とされており、広範囲で宅造区域が指定されている都市近郊の造成地でその要件を満たすケースは、比較的少ないと思われます。また、過去に指定された造成宅地防災区域は、指定後おおよそ1年程度で解除されています。
過去の経緯を紐解くとある程度指定の傾向が見えるかと思います。
新潟県中越地震 平成16年10月23日発生
造成宅地防災区域制度導入 宅地造成等規制法等の一部を改正する法律 平成18年9月30日施行
新潟県で初の指定
柏崎市山本団地 平成19年12月21日指定 平成21年6月23日解除
東北地方太平洋沖地震 平成23年3月11日発生
茨城県での指定
ひたちなか市 本郷台-2 平成24年7月12日指定 平成25年5月20日解除
ひたちなか市 本郷台-1 平成24年7月12日指定 平成25年6月20日解除
ひたちなか市 東中根 平成24年7月12日指定 平成25年6月20日解除
ひたちなか市 勝田台 平成25年3月18日指定 平成26年1月30日解除
鹿嶋市 鹿島神宮駅南 平成25年3月14日指定 平成27年11月20日解除
東海村 南台-1 平成25年3月14日指定 平成28年5月26日解除
東海村 南台-2 平成25年3月14日指定 平成28年5月26日解除
東海村 緑ヶ丘 平成25年3月14日指定 平成28年5月26日解除
宮城県での指定
亘理町長瀞字堂前4 平成24年5月22日 平成25年10月25日解除
宮城郡利府町神谷沢字金沢 平成24年10月16日 平成25年7月12日解除
塩竈市藤倉一丁目、二丁目 平成25年3月22日 平成27年6月23日解除
塩竈市青葉ヶ丘1番 平成24年12月4日 平成27年6月23日解除
塩竈市母子沢町 平成25年3月15日 平成27年6月23日解除
白石市郡山字虎子沢山 平成25年2月22日 平成26年4月18日解除
白石市緑が丘二丁目 平成25年2月22日 平成26年4月18日解除
岩手県での指定
一関市山目字館 平成24年3月13日指定 平成25年3月26日解除
このように、造成宅地防災区域は、大地震の被災地において指定され、対策工事完了後に解除されています。