建築基準法上の道路 建築線とは

告示建築線(建築基準法 附則5項道路)

告示建築線とは

現在建築物等の敷地・構造の最低基準は建築基準法により定められていますが、それ以前は旧市街地建築物法が施行されていました。現行の建築基準法においては、「接道義務」が定められていますが、旧市街地建築物法においても同様の規定(接線義務・接道義務)(8条)がありました。また、市街地建築物法7条但書において、行政官庁(東京府においては警視総監)は、別に建築線を定めることができるとされ、まったく道路のないところに指定されている場合もあります。

市街地建築物法は、建築基準法の施行に伴い廃止されましたが、建築基準法附則第5項において、市街地建築物法により指定された建築線のうち幅員4m以上のものは、建築基準法42条1項5号道路とみなすと規定されており、告示建築線は位置指定道路に引き継がれています。

市街地建築物法上の道路は、施行当初(大正8年12月1日)は、幅員9尺(2.72727…m)でしたが、昭和13年の改正において、幅員4m以上となったため、この改正以後の告示建築線は、42条1項5号道路となると考えられます。

告示建築線の幅員が4mである場合は、その後退ライン(復元すべきライン)は一般的な2項道路の場合と基本的には一致することになりますが、4m以上であった場合は、さらに後退が必要となります。具体的には、18尺(5.4545…m)の建築線が存在していた場合、中心後退と仮定すると、2.727272mの中心後退が必要となります。建築線は、位置指定道路であることから、その変更には、全所有者の同意等が必要であり現実的ではありません。なお、幅員が4mに満たない告示建築線は、42条2項道路となります。

名古屋市の建築線

名古屋市においては、愛知県警察部保管の建築線の資料が戦災により焼失しているため、市内の建築線はほとんど把握されていません。なお、私道の場合、2項道路判定の有力な証拠となります。

大阪市の船場建築線

阪神高速環状線の内側のうち長堀通より北側の範囲は、船場建築線と呼ばれる告示建築線が、ほぼ全域に指定されています。指定図によると、道路中心から5m(または6m)の後退ラインが示されています。大阪市のこの船場建築線は、道路状に整備されておりません。市街地建築物法は当初より、建築線の定義について、道路境界と解釈する場合と壁面線の後退ラインと解釈する場合があり、その定義の混乱に由来するものと思われます。