地方公共団体の条例等による制限 1

はじめに

通常、重要事項説明書の建築基準法等に基づく制限の最後に「地方公共団体の条例等による制限」と記載された項目があります。仕事柄、様々な会社が作成した重要事項説明書を見てきましたが、この部分についての記載要領が一定ではありません。何も書かれていない場合もあれば、文字通りに把握しうるすべての条例を記載している場合もあります。

しかし、建築基準法および都市計画法は、多くの事項を条例で定めることとしており、それらをすべて記載した場合、収拾がつかなくなる可能性があります。特別用途地域、特別用途制限地区、風致地区、地区計画、日影規制、災害危険区域、壁面線など、建築基準法と都市計画法のみで検討しても、条例に委任されている事項が多数あります。さらには、景観条例や中高層紛争防止条例、緑化条例、ワンルームマンションを規制する条例、屋外広告物条例…など、きりがありません。

改めて、この項目は本来何を記載することを意図して設定されているのか、この項目で必ず記載すべき重要度の高い条例は何かについて考えると、建築基準法第40条に基づく条例(地方公共団体の条例による制限の附加/単体規定)について記載する欄であると考えられます。一方、「敷地と道路との関係」欄においても、条例による制限を記載する欄がありますが、こちらは建築基準法第43条2項(特殊建築物等の接道義務の強化/集団規定)に基づく条例を記載することが期待されています。

 

地方公共団体の条例等による制限の付加(概要・東京都)

建築基準法第40条では、建築物の敷地、構造又は建築設備に関して安全上、防火上又は衛生上必要な制限を附加することができるとされています。またこの条文は、建築基準法の第二章(単体規定)のものですから、都市計画区域・準都市計画区域の内外を問わず適用されます。建築基準法第40条を根拠として定められていると考えられる条例のうち、重要事項説明に記載することが望ましいと考えられるものの概要を東京都建築安全条例をもとに見ていきましょう。

 角地の隅切り(安全条例第2条)

接する道路がいずれも6mに満たない角地では、底辺2mとなる二等辺三角形の隅切りを設け、この部分に建築することはできません。なお、敷地面積に算入することはできます。

 路地状敷地の形態(安全条例第3条)

路地状のみによって道路等に接する場合、路地状の長さに応じて路地状部分の幅員を一定以上にする必要があります。

敷地の路地状部分の長さ 路地状部分の幅員
20m以下 2m以上
20mを超える 3m以上

路地状敷地の建築制限(安全条例3条の2)

路地状のみによって道路等に接する場合で、路地状部分の幅員が4m未満のときは、3階以上(耐火・準耐火建築物等は4階以上)の建築物は建築できません。

がけ条例(安全条例第6条)

がけ付近での建築については、大きく制限される場合があります。がけ条例については、また詳細にお届けします。

新たな防火規制(安全条例第7条の3)

指定区域内の準防火地域においては、建築物の建築、増改築等をする場合は、原則として、すべて準耐火建築物以上の性能が必要となります。また、延べ面積が500㎡を超えるものは耐火建築物とする必要があります。なお、新たな防火規制の適用のある区域は防火地域を含みますが、制限が強化されるのは準防火地域のみとなります。

路地状敷地の制限(安全条例10条)

特殊建築物は、路地状部分のみによって道路に接する敷地に建築することはできません。

窓先空地(安全条例第19条第2項)

共同住宅等の居室は、道路に直接面する窓を設置するか、またはその規模に応じて定められる幅員の窓先空地を設ける必要があります。敷地の形状や道路との位置関係によっては、建物の形状が大きく制約される場合があります。アパートの調査等を行うと、敷地の二重使用等により窓先空地がなくなっている場合があるので注意が必要です。

路地状敷地の形態・建築制限について

路地状敷地の形態や建築制限については、一般に接道義務の強化であると理解されていますが、接道義務がない場合であっても適用されることが予定されており、厳密な意味では接道義務の強化ではなく、敷地の形状等などが制限されている条例です。もちろん、重要事項説明の作成においては、敷地と道路との関係欄に記載する方が、読み手にとって理解が容易となるケースも多く、現実の取引は都市計画区域内が大半と思われますので、必要に応じて記載箇所を変更しても大きな問題はないと思われます。